クラミドフィラ

【クラミドフィラとは】

クラミドフィラとは、クラミドフィラニューモニエ(Chlamydophila Pneumoniae)という菌による感染症です。長引く咳が特徴的なクラミドフィラ気管支炎、クラミドフィラ肺炎などの呼吸器感染症をしばしば引き起こします。咳でうつる感染症で、学校やオフィスなどで集団感染を起こして問題となります。主に性感染症や新生児の肺炎を引き起こすクラミジアトラコマチス(Chlamydia trachomatis)とは名前は似ていますが別の菌です。オウム病クラミドフィラ(Chlamydophila Psittaci)感染によるオウム病(Psittacosis)という別の病気もあります。肺炎全体の10~15%程度がクラミドフィラニューモニエ感染による肺炎であると言われています。2016年秋頃から、お茶の水、神保町、小川町、水道橋あたりの学校やオフィスビルで流行が徐々に始まっています。

【クラミドフィラの症状】

最初、発熱、咽頭痛、頭痛、だるさなど普通の風邪っぽい症状があった後、1週間くらいしてから咳が出始めます。乾性咳嗽と言って痰の絡まない乾いた咳が特徴的ですが、肺炎を来すと痰も絡みます。風邪の後に咳が止まらない、今までこんなに咳が続くことはなかった、市販の咳止めを飲んでも薬が切れるとまた咳が出て治らない、咳のせいで寝れない、しゃべる時に咳が止まらなくなる、などの症状がクラミドフィラを疑い検査をするきっかけになります。発熱は軽度か最初のみでほとんど認めない場合も少なくありません。クラミドフィラという細菌は細胞壁を持たない細菌で、細胞壁をターゲットに抗菌作用を発揮するペニシリン系抗菌薬やセフェム系抗菌薬などのβラクタム系というグループの抗菌薬が無効であるのもクラミドフィラの特徴です。3週間以上咳が止まらない、そう言えばまわりにもずっと咳をしている人がいる場合、クラミドフィラを始めとする咳の感染症を疑って診察を進めていきます。

【クラミドフィラの検査】

主に採血検査でクラミドフィラに感染しているかどうか調べます。クラミドフィラに感染している場合クラミドフィラ抗体が上昇が認められます。長引く咳の原因となる感染症にはクラミドフィラの他に、マイコプラズマや百日咳、結核など様々な原因がありますが、咳の症状だけでは原因を特定するところまでは出来ません。気管支喘息や咳喘息でも夕方、夜間、明け方の発作性の咳症状が出ますので、既往歴、小児喘息の既往の有無、喫煙歴、聴診など適宜診察します。他、慢性的な咳症状を来す疾患の疑いがあれば胸部レントゲンを始め適宜追加の検査を行うこともあります。特に、結核は見逃しては非常にまずいので、結核または結核疑いの人と接触した、接触した可能性がある場合は必ず医師に伝えてください。いずれにせよ、ただの普通の風邪で咳が3週間以上残ることはないので、咳が3週間以上続いていて全然止まらない場合は一度医療機関を受診しましょう。

【クラミドフィラの治療】

クラミドフィラに有効な抗菌薬で治療します。第一選択として、テトラサイクリン系抗菌薬やマクロライド系抗菌薬、主に3日内服して一週間効果のあるジスロマック(アジスロマイシン)という抗菌薬を使います。同じマクロライド系抗菌薬のクラリス(クラリスロマイシン)は近年耐性化が指摘されていますが、効いているようであれば続けます。治療はクラミドフィラの咳症状がなくなるまでです。多くの場合、1週間または2週間で治ります。マクロライド系抗菌薬の腸管への作用でお腹が緩くなることがしばしばあるので整腸剤と一緒に使います。ミノマイシン(ミノサイクリン)、ニューキノロン系抗菌薬を使う場合もあります。

【クラミドフィラの二次感染予防】

クラミドフィラは咳でうつる感染症です。咳でうつるため、学校での集団感染、オフィスでワンフロアごと集団感染することが多いです。咳だけだからと言って放置すると、社内で感染拡大を起こしてしまうだけでなく、お客さんやお取引先などにもうつしてしまいます。また小さいお子さんがマイコプラズマにかかると重症な呼吸困難を起こしてしまうこともあり、二次感染予防の観点からも適切な検査、適切な治療が重要です。潜伏期間が3~4週間ほどと言われていますので、接触した後すぐに症状が出る訳ではなく、しばらくしてから咳が始まるので注意が必要です。咳が2週間以上続く場合は一度検査を受けましょう。まわりでずっと咳をしていて医療機関に行かない人がいたら受診を奨めましょう。


 

PAGETOP