風邪と風邪に似た風邪でない疾患

【風邪と風邪に似た風邪でない疾患】

風邪と風邪に似た風邪でない疾患についてまとめます。当院では、風邪と、風邪に似た風邪でない疾患とは明確に区別して診断、治療しています。なぜならば、風邪か風邪でないかによって、治療法と対処法が大きく異なる場合があるからです。少々専門的な用語が出て来てしまいますが、大事なところですので、下記詳しく説明します。

【風邪とは?】

第一に風邪とは何でしょうか?風邪とは「自然治癒する急性のウイルス性の上気道の感染症」と定義します。ここでは、多くの場合細菌感染症である細菌性扁桃炎や、自然治癒しにくい慢性副鼻腔炎などを含めない風邪の狭義の定義です。抗菌薬の適応等、治療法が明確に異なりますので、当院では、「喉風邪」や「鼻風邪」などの曖昧で誤解を招く表現は用いません。また、インフルエンザもインフルエンザウイルスによるウイルス感染症ですが、抗インフルエンザ薬があること、出席停止基準等の社会的に取り扱いが異なるため、風邪とは区別します。さらに、感染症ではないのに風邪のような症状を来たす疾患として気管支喘息、咳喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、逆流性食道炎、などがあります。

【典型的な風邪】

典型的な風邪(Common Cold)は、最初に喉のイガイガ感などから始まり、寒気、発熱、頭痛などを伴いながら、喉の痛み、鼻水、咳などの上気道症状、いわゆる風邪症状が出現します。ピークを超えると、鼻水、咳、痰、などの症状が続きながら段々と自然と治っていきます。風邪の診断は症状からの臨床診断かつ除外診断です。風邪は自然治癒することが特徴です。風邪を治す薬というのはありません。風邪の治療の基本は、十分な休養、睡眠、水分、栄養の摂取、必要に応じて辛い症状に対する対症療法です。

【風邪の対症療法】

風邪は「自然治癒する急性のウイルス性の上気道の感染症」ですので、自然治癒します。それまでの間、辛い症状に対して症状を和らげるのが風邪の対症療法です。下記はあくまで処方の一例です。全身状態がよく、症状が軽快傾向であれば、処方なしで全く問題ありません。

・熱が辛い→ロキソニン、カロナール、葛根湯、麻黄湯

・喉の痛みが辛い→ロキソニン、桔梗湯、トローチ、うがい薬、小柴胡湯加桔梗石膏、トランサミン

・鼻水が辛い→アレグラ、ザイザル、デザレックス

・鼻づまりが辛い→アラミスト、シングレア、葛根湯加川芎辛夷

・痰が辛い→ムコダイン、ムコソルバン

・咳が辛い→メジコン、フスコデ、麦門冬湯、麻杏甘石湯

・喘息持ち→シングレア、アドエア、レルベア、シムビコート、ホクナリンテープ

・副鼻腔炎持ち→シングレア、葛根湯加川芎辛夷

・だるさが辛い→十分な休養、十分な睡眠、麻黄附子細辛湯、補中益気湯

・風邪を周りにうつしたくない→マスク、うがい、手洗い

・風邪を早く治したい→十分な休養、十分な睡眠

・煙草吸っていいか?→理想は禁煙、せめて風邪が治るまでは喫煙を控える

・お酒飲んでいいか?→禁忌ではないが咳止めや鼻水止め等の薬は併用して眠気等が強く出る薬があるので注意、基本的な体調管理としても飲み過ぎは控える

※抗菌薬は風邪には適応になりません。風邪は自然治癒します。治療はそれまでの間、辛い症状に対する対症療法です。抗菌薬は、風邪を早く治す効果も、重症化予防効果も、二次感染予防効果にもエビデンスがないことに注意ください。慢性副鼻腔炎や慢性気管支炎に対して例外的にマクロライド系抗菌薬の少量長期投与が存在しますが、マクロライドの粘膜調整作用を利用したものであり、抗菌作用を期待したものではありません。嘘は泥棒の始まりと同様、風邪に抗菌薬は藪医者の始まりです。我々世代から抗菌薬の不適切な使用をなくしましょう。

【風邪に似た風邪でない疾患】

風邪に似た風邪でない疾患として、扁桃炎、副鼻腔炎、気管支炎(百日咳、マイコプラズマ、クラミドフィラ)、肺炎、インフルエンザ、気管支喘息、咳喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、逆流性食道炎、結核を挙げました。また鑑別疾患として、急性咽頭蓋炎、細菌性髄膜炎、感染性心内膜炎、心不全、自己免疫疾患、悪性腫瘍による腫瘍熱、薬剤熱、心因性を挙げました。以下、それぞれ簡単に説明します。詳しくはそれぞれのページをご覧ください。

・扁桃炎、喉の奥、扁桃という場所に主に細菌感染を起こした状態です。咽頭痛、発熱、特に飲み込むのも辛いくらいの強い喉の痛みが特徴です。抗菌薬が必要になる場合は多いことが風邪との違いです。主に咽頭所見によって診断します。

http://ochanai.com/tonsillitis

・副鼻腔炎、鼻の奥、副鼻腔という場所に主に細菌感染を起こした状態です。風邪との違いは、週単位で長引きやすい、中等症以上はマクロライド系抗菌薬の適応となること、治療も長引きやすい、難治性や慢性反復性では副鼻腔手術の適応になることなどです。副鼻腔レントゲンにて簡単に診断可能です。

http://ochanai.com/sinusitis

・気管支炎、風邪は上気道の感染症であるのに対し、下気道である気管支まで感染が起こっている状態です。ウイルス性、細菌性と両方ありますが、特に百日咳菌、マイコプラズマ菌、クラミドフィラ菌による感染症は長引く頑固な咳嗽が特徴であること、多くの場合抗菌薬の適応となること、集団感染や二次感染に注意であること、百日咳はワクチン予防接種によって予防可能であること、などが風邪と異なります。胸部レントゲンと採血検査によって診断します。咽頭拭い液検査もあります。

百日咳→http://ochanai.com/pertussis

マイコプラズマ→http://ochanai.com/mycoplasma

クラミドフィラ→http://ochanai.com/chlamydophilapneumoniae

・肺炎

下気道である肺に感染を起こした状態です。ウイルス性、細菌性とありあすが、多くの場合細菌感染症を疑って抗菌薬の適応となります。急性の上気道炎、気管支炎からの肺炎に悪化する場合と、肺炎で発症する場合とがあります。重症度によっては入院治療の適応になります。胸部レントゲンにて診断します。

肺炎→http://ochanai.com/pneumonia

・インフルエンザ

インフルエンザウイルスによる感染症です。高熱、悪寒、関節痛、全身倦怠感等の全身症状が強いことが特徴ですが、症状だけでは風邪と見分けが付かないことがあります。抗インフルエンザ薬があること、出席停止基準等の社会的に取り扱いが異なるため、風邪とは区別します。感度が十分ではないのが課題ですがインフルエンザ迅速検査と、接触歴、臨床症状から総合的に診断します。

インフルエンザ→http://ochanai.com/influenza

・気管支喘息、咳喘息

気管支喘息、咳喘息は、気管支が過敏な体質であり、風邪とは異なりますが、風邪の後に連続的に発症、悪化することも多く、自覚がないことも少なくありません。治療のメインは吸入薬による抗炎症療法であること、季節の変わり目、気温、湿度、気圧などの変化や吸入異物の影響を受けること、などから風邪と異なります。繰り返すことが特徴ですので、一回の診察のみで明確に診断が出来ないことも少なくありません。喘息っぽい、喘息疑いという表現があるのはこのためです。胸部レントゲンや副鼻腔レントゲンによる除外検査、スパイロメーター検査等によって総合的に診断します。

気管支喘息→http://ochanai.com/bronchialasthma

咳喘息→http://ochanai.com/coughvariantasthma

・慢性閉塞性肺疾患

慢性気管支炎、肺気腫、などとも呼ばれますが、長期間の煙草煙への暴露にて気管支や肺胞に慢性的に障害を持った状態です。風邪を引きやすい、風邪の後に咳が痰が治らない、労作時の息切れ、などの症状です。治療の第一は禁煙です。

喫煙→http://ochanai.com/smoking

・アレルギー性鼻炎

通年性アレルギーと季節性アレルギーとがあります。花粉が原因の場合が花粉症です。慢性的な鼻水、鼻づまり、咳、咽頭違和感などが特徴です。アレルギー反応が原因で、感染症ではないことが風邪との明確な違いです。治療の基本は抗原の回避と抗アレルギー薬による対症療法です。風邪や副鼻腔炎と合併することもあります。

http://ochanai.com/allergicrhinitis

・逆流性食道炎

慢性的な咳嗽の代表的な原因の一つです。診断は症状または上部消化管内視鏡検査で、治療は制酸薬です。

http://ochanai.com/gerd

・結核

現代の日本でも結核はゼロではありません。慢性的な咳嗽では必ず鑑別疾患に入れる必要があります。

急性咽頭蓋炎、細菌性髄膜炎、感染性心内膜炎、心不全、自己免疫疾患、悪性腫瘍による腫瘍熱、薬剤熱、心因性など、詳細に鑑別疾患を上げればキリがありませんが、このあたりで割愛します。

【なぜ風邪と風邪以外を区別する必要があるのか?】

治療法が異なるからです。風邪は「自然治癒する急性のウイルス性の上気道の感染症」です。自然治癒することが特徴ですので、治療は全て対症療法です。また抗菌薬は細菌感染症に対してのみ効果があり、ウイルス感染症には無効です。細菌性の感染症以外に抗菌薬を使用することは無効であるばかりでなく、地域に耐性菌を生み出し地域の感染症治療を困難にするなど有害ですらあるからです。また、気管支喘息、咳喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、逆流性食道炎などは感染症ですらありません。風邪以外にもあらゆる症状に対して言えることですが、適切な診断、適切な治療が重要です。

・抗菌薬の適正使用→http://ochanai.com/antibacterialdrugs

・風邪の自宅療養→http://ochanai.com/coldhomecare


 

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