咳喘息

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【咳喘息とは】

咳喘息とは、喘息まではいかないけども喘息っぽい特徴の咳が長く続く症状です。風邪の後に咳だけ残る、季節の変わり目に咳が止まらなくなる、などが特徴です。原因は気管支の炎症で、咳止めで一時的に咳は押さえられますが気管支の炎症自体は治っていないので咳止めが切れるとまた咳が止まらなくなるのが特徴です。咳が長引く場合は医療機関に相談しましょう。

【咳喘息の特徴】

咳喘息の特徴としては、気管支のほうから込み上げる咳、発作的に咳が出始めて止まらなくなる、夕方、夜間、明け方に悪化する、咳で寝れない、咳のし過ぎで胸が痛い、などの症状が特徴です。症状が年中ある訳ではなく、風邪を引いた後、季節の変わり目だけ出ることが特徴です。気温、湿度、気圧の急な変化が関係し、梅雨入り、梅雨明け、強い冷房、夕立や台風の時期、秋から冬に掛けて急に寒くなる時期、冬場の乾燥する時期、春にポカポカ暖かくなって来る時期、などが症状が出やすい時期です。気管支の炎症が原因ですので、気管支のムズムズする感じ、喉の奥がイガイガする感じ、など気管支の違和感を自覚している場合もあります。小児喘息の既往があった方は大人になると喘息症状がほとんど出なくなることが多いのですが、気管支の過敏の体質だけ残ることが多いです。何らかの吸入系のアレルギーが関係している場合も多く、花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギー体質や家族歴も関係しています。ホコリ、カビ、煙草の煙、飛行機による急な気圧の変化、なども症状悪化の原因になります。何度も繰り返していると咳喘息の症状が出る予感が自分でわかるようになったりします。

【咳喘息の診断】

咳喘息の診断は主に臨床診断です。上記のような咳喘息の特徴に合致する症状があること、さらに咳喘息に対する治療で症状が軽快すること、です。慢性的な咳の原因は多岐に渡りますが、マイコプラズマ、百日咳、結核などの感染症ではないこと、など除外が重要です。感染症との違いは発熱がないことや聴診などで多くの場合鑑別出来ますが、百日咳やマイコプラズマなどの感染症が流行っている場合は必要に応じてレントゲンや採血で検査を進めていくこともあります。気管支喘息と咳喘息の違いとして聴診で喘鳴音がないことなどいくつか特徴がありますが、どちらも同じく気管支の慢性炎症が原因であること、治療も大きく変わらないこと、咳喘息を治療しないと30%前後は気管支喘息に移行するという報告もあり、連続した疾患概念として治療していけばよいと考えています。現実的には、咳喘息の治療薬を使ってそれで症状が改善した場合に、後から咳喘息だったんだとわかる、というように治療を進めていくことが多いです。このように遡って診断が付けていく診療法を「診断的治療」や「治療的診断」などと言い、逆流性食道炎に対する制酸薬の処方など、症状から治療していくことは実は珍しくはありません。

【咳喘息の治療】

咳喘息の治療は喘息の治療に準じて気管支の炎症を治す治療が中心です。直接気管支に届いて気管支の炎症を治す吸入薬が一番重要です。適宜気管支拡張薬や鎮咳薬を使います。

・アドエア(フルチカゾン、サルメテロール)、シムビコート(ブデソニド、ホルモテロール)、レルベア(フルチカゾン、ビランテロール)、吸入ステロイド薬と呼ばれる咳喘息の基本薬です。気管支の炎症を鎮める作用で、咳喘息の原因に対する治療です。咳喘息の症状が出た時のために予備的に吸入薬を一個自宅に持っておくのがよいでしょう。吸入ステロイドとβ刺激薬の配合の吸入薬が効果が高いですが、フルタイド(フルチカゾン)などの吸入ステロイド薬単剤もあります。飲み薬のステロイドと違って全身への副作用は大きな心配ありません。

・サルタノール(サルブタモール)、メプチン(プロカテロール)、β刺激薬、気管支拡張薬と言って、気管支を広げ、呼吸を楽にします。吸入ステロイド薬のことを長期管理薬(コントローラー)、β刺激薬のことを発作治療薬(レトリーバー)と言います。レトリーバーに気管支の炎症自体を治す作用はないので、必ずコントローラーをベースに治療することが大切です。β刺激は心臓に作用すると頻脈になりますので、ドキドキ動悸がした場合は使わないようにしてください。気管支拡張薬の貼り薬、ホクナリンテープ(ツロブテロール)もあります。

・メジコン(デキストロメトルファン)、鎮咳薬です。気管支の炎症自体を治す作用はありませんが、咳が収まるまで咳止めを併用します。

・シングレア(モンテルカスト)、ロイコトリエン拮抗薬です。気管支の調子を整えます。

・アレグラ(フェキソナジン)、ザイザル(レボセチリジン)、抗ヒスタミン薬です。咳喘息の背景にアレルギー性の要因の関与が考えられる場合に使います。

・麦門冬湯、漢方薬です。乾いた咳で湿り気や潤いで収まるような咳に相性がよいです。

・プレドニン(プレドニゾロン)、咳がとにかく酷い場合、短期間限定で内服のステロイドを使うこともあります。強力に炎症を押さえます。症状が収まったら辞めていきます。

・禁煙、煙草の煙は気管支に対して異物であり、咳喘息の明らかな悪化要因です。喘息とCOPDの合併(ACOS:Asthma COPD Overlap Syndrome)という病態も近年注目されており、原因は喫煙で、禁煙で予防出来ます。いきなり禁煙とまではいかなくても少なくとも咳が収まるまでは煙草は控えましょう。

・アスピリン喘息が疑われる場合、アスピリンを代表に、ロキソニン、イブプロフェンなどの解熱鎮痛薬の成分で咳が悪化する体質の人がいます。市販の風邪薬にも解熱鎮痛薬は含まれていますので、最初はただの普通の風邪で、風邪薬を飲んでから急に咳だけ悪化した、という場合にアスピリン喘息を疑ったりまします。治療は原因となった解熱鎮痛薬の中止です。アスピリン喘息があって大丈夫な解熱鎮痛薬を使うことが大切です。

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。


 

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