麻疹

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【VPDとは】

ワクチンで予防可能な疾患のことを、文字通り、VPD(Vaccine Preventable Diseases)と言います。VPDには、麻疹、風疹、水痘、ムンプス、百日咳、破傷風、狂犬病、A型肝炎、B型肝炎、など多岐に渡ります。VPDの感染予防のために事前にワクチンを接種し、十分な免疫力を獲得しておくことが大切です。

【典型的な麻疹】

麻疹は麻疹ウイルスによる感染症です。最初はカタル期と言って、発熱、咽頭痛、咳、鼻水、結膜充血、目脂、などの風邪っぽい症状で始まりますが、この時期はただの普通の風邪と見分けが付きません。発症3日目前後にコブリック斑と言って口の内側の粘膜に特徴的な白い斑点が現れますが24時間くらいで消えてしまいます。その後一旦解熱、約12時間後に二峰性発熱と言って再び38度以上の高熱、発疹期と言って麻疹に特徴的な発疹が現れ始めます。麻疹の発疹は耳後部、頸部、顔面から始まり、体幹、四肢抹消へ次第に全身に広がって行きます。発疹は鮮紅色でやや隆起、圧迫によって退色、融合傾向あり、一部に健常皮膚が残る不定形の発疹となり、3~5日間程度続きます。その後回復期と言って熱が下がり、発疹は出現順序に徐々に従って退色し、暗褐色の色素沈着を残し、落屑を伴いながら次第に治っていきます。発疹出現後は麻疹特異的IgM抗体という検査が陽性になり、血液検査で麻疹かどうかがわかります。麻疹の30%ほどに合併症が起こると言われており、肺炎、中耳炎などが多いですが、稀に急性散在性脳炎、亜急性硬化性全脳炎と言って重度の神経後遺症を残してしまうこともあります。妊娠中に麻疹に感染すると流産や早産の原因になると言われています。麻疹は代表的なVPD(ワクチンで予防可能な疾患)です。麻疹の合併症はいずれも発症後に有効な治療法はないので、ワクチンで予防するのが唯一確実な予防法です。

【麻疹の診断と届出基準】

麻疹の届出に必要な臨床症状として、(ア)麻疹に特徴的な発疹、(イ)発熱、(ウ)咳嗽、鼻汁、結膜充血などのカタル症状、の3つがあります。麻疹に特徴的な臨床症状を3つ全て認める場合、麻疹と臨床診断します。麻疹に特徴的な臨床症状3つを認め、かつ麻疹特異的IgM抗体などの病原体検査で陽性を認める場合、麻疹と検査診断します。臨床症状1つ以上を認め、検査で陽性を認める場合に、修飾麻疹と検査診断します。上記のいずれも基準を満たさない場合、麻疹は否定されます。麻疹は感染症法で五類感染症、全数把握疾患に指定されており、感染状況の把握、感染拡大の防止などの観点から、麻疹の届出基準を満たした場合、全例、保健所に届出が義務付けられています。

【出席停止期間】

学校保健安全法における出席停止基準では解熱後3日間を経過するまで登校禁止と定められています。社会人の場合は法的に明確な基準はありませんが、学校保健安全法に準じて解熱後3日間を目安とする会社が多いです。麻疹の潜伏期間は10日~12日です。麻疹は空気感染と言って、通常の飛沫感染とは違って非常に感染力が強く、麻疹の抗体を持っていない人が麻疹感染者と接触すると90%以上感染するとまで言われており、麻疹患者さん一人あたり平均10人以上にうつすと言われています。典型的な麻疹の場合は臨床症状から診断、診断書の発行をしていきますが、麻疹が疑われるけれども典型的な麻疹の症状の基準を満たさない場合、採血検査によって麻疹かどうか確定診断をする必要があり、採血検査の結果が出るまではの数日間は「麻疹疑い」であり、本当に麻疹かどうかはっきり出来ない期間が発生してしまいます。下記の修飾麻疹疑いの場合でペア血清検査を行う場合は確定診断までさらに期間を必要とし、その期間どのように扱うべきなのいか職場での対応は非常に難しい判断になります。いずれにせよ、麻疹抗体が十分であれば麻疹は予防可能な疾患ですので、麻疹ワクチンの接種によって十分な免疫を得ておくことが大事です。

【麻疹ワクチン】

麻疹ワクチンは麻疹と麻疹の合併症の唯一の予防法です。小児の頃に麻疹ワクチンを打っていても、抗体価と言ってワクチンによる免疫力が落ちて来てしまっていることが多いので、成人した後も予防接種を受けることで抗体価が強くなります。仮に麻疹抗体が残っていても、追加免疫効果(ブースター効果、Booster Effect)と言って、重ねてワクチンを接種することで抗体価が高まる効果がありますので、重ねて打っておいても全く損はありません。麻疹に対する免疫力を知りたい場合、自費になりますが血液検査で麻疹特異的IgG抗体という麻疹抗体価を調べることが出来ます。麻疹抗体価は、発症予防レベルが麻疹抗体価4.0倍以上(EIA法)、感染予防レベルが麻疹抗体価16.0倍以上(EIA法)で、抗体陽性レベルの麻疹抗体価2倍(EIA法)では、発症予防、感染予防には不十分であることに注意してください。麻疹抗体が発症予防レベル以上かつ感染予防レベル未満ですと、不顕性感染と言って症状は発症はしないけれど感染はしてしまう危険性があり、顕性感染と同じく人にうつしてしまう可能性のありますので、しっかりと感染を予防したい場合は、感染予防レベルの麻疹抗体価16.0倍以上(EIA法)の十分な免疫を獲得しておくことが重要です。麻疹ワクチンには麻疹単独の麻疹ワクチン、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)の二種類があります。お茶の水内科では各種抗体検査、各種ワクチンを取り扱っています。ワクチンの種類と費用等に関しては下記ページをご覧ください。→http://ochanomizunaika.com/general

【修飾麻疹】

上記のように、典型的な麻疹の臨床症状を認める場合に麻疹の診断は難しくありませんが、麻疹ワクチン接種後や以前に麻疹に感染した後で、感染や発症を予防するほどの十分な免疫はないけれど、微妙に抗体価が残っている状態で麻疹に感染すると、修飾麻疹(Modified Measles)と言って、典型的な麻疹の症状が出ないため診断は非常に難しくなります。具体的には、発熱がそこまで高熱にならない、コブリック斑が出現しない、二峰性発熱が見られない、皮疹が全身に広がらない、皮疹の出現や消退が非典型的になる、潜伏期間が長い、などの特徴があり、臨床症状から麻疹の診断が困難です。一回の採血検査では診断が付かない場合、必要に応じてペア血清と言って二回採血検査を行う必要が出てきてしまいます。発熱や咽頭痛だけの症状だとただの風邪と見分けが付かなく診断が遅れたり、診断結果が出るまで麻疹かどうか不明な期間仕事を休んだりしなくてはならない、一回の検査で診断が付かない場合に検査を二回受ける必要がある、など患者さんも医師もお互いに困ってしまうことが多いです。いずれにせよ、麻疹抗体が不十分であることが原因で、麻疹抗体が十分であれば麻疹は予防可能な疾患ですので、麻疹ワクチンの接種によって十分な免疫を得ておくことが大事です。

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