【インフルエンザワクチンとは】
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンと呼ばれ、インフルエンザに対する免疫力を付けるために必要な成分を取り出して病原性をなくしたものです。インフルエンザウイルスそのものではないので、インフルエンザワクチンでインフルエンザになることは絶対にありません。インフルエンザワクチンの株は、毎年WHOなどでその年のシーズンで流行が予想されるインフルエンザウイルスの株を予想し、それを受けて日本国内で国立感染症研究所などのインフルエンザの専門家がそれに対応したワクチン株の製造を決定します。日本では2015年からA型から2種類、B型から2種類、合計4種類の4価ワクチンになっています。流行予想株は予想ですので予想が外れることもありますが、予想が一致すればより高い発症予防効果、予想が外れても重症化予防効果はあると言われています。ワクチン株に関しては国立感染症研究所のページをご覧ください。
→http://www.nih.go.jp/niid/ja/flu-m/flutoppage/2066-idsc/related/584-atpcs002.html
【インフルエンザワクチンの効果】
インフルエンザワクチンはインフルエンザの発症を100%予防するものではありません。インフルエンザワクチンの主な効果はインフルエンザの重症化予防です。また感染後の発症予防を期待するものであり、インフルエンザに感染すること自体の予防効果はありません。具体的には、インフルエンザ発症予防効果は60%程度と言われており、インフルエンザワクチンの予防接種をしなかった場合に比べて、インフルエンザワクチンの予防接種をした場合、インフルエンザの発症のリスクを60%程度軽減する、という効果になります。ですので、インフルエンザ予防接種を打ったのにインフルエンザに掛かってしまったということはしばしばあります。それでもワクチンを打たなかった場合に比べて重症化せずに済むこと、それがインフルエンザワクチン予防接種の効果です。また、インフルエンザ脳症や肺炎などのインフルエンザ合併症の予防、インフルエンザによる入院や死亡のリスクを低減する効果、家族や職場、学校などの集団生活において二次感染を予防する効果などを期待して、インフルエンザワクチンの予防接種を行っています。お茶の水内科では感染予防の観点からスタッフ全員インフルエンザ予防接種を受けるようにしています。
【インフルエンザワクチンの注意点】
多くの方で、インフルエンザワクチンの予防接種部位が多少腫れたり、赤くなったり、かゆくなったりの局所反応が見られます。数日で自然と軽快しますので、様子見で大丈夫です。インフルエンザワクチンに対して抗原抗体反応が起こり、それで免疫力が付いていく仕組みですので、そういうものだと思ってください。多少だるくなったり、全身が熱っぽくなったりはしばしばありますので、予防接種当日は激しい運動、大量の飲酒は控えるようにしましょう。全身に蕁麻疹が出たり、アナフィラキシーと言って重症なアレルギー症状を起こしたことがある場合は、インフルエンザワクチンは接種禁止です。インフルエンザワクチンの製造過程でトリの卵の成分を使っていますので、卵アレルギーがある方は注意ですが、卵を食べても特に大丈夫な方であればワクチンを打っても基本は大丈夫です。明らかに発熱がある場合や他の急性疾患の治療中の場合は、接種を見合わせ、治ってからにします。多少の鼻炎程度であれば、多くの場合、予防接種をしてしまって大きな問題ありません。高血圧、脂質異常症、糖尿病などの治療中も予防接種は特に問題はありません。妊娠中も基本的に予防接種は問題ありません。免疫抑制薬、高容量のステロイド治療中は、予防接種を受けること自体は多くの場合問題はないのですが、免疫抑制状態ですとちゃんと免疫が付かない場合がありますので注意です。その他、わからないことがあれば医師にご相談ください。
【インフルエンザワクチン予防接種の時期と回数】
予防接種はインフルエンザのシーズンが流行が始まる前に行うことが大事です。予防接種をしたその日から免疫力が付く訳ではなく、予防接種後2週間程度はかかると言われています。インフルエンザの流行は年によっても違いますが、だいたい毎年12月くらいからですので、それまでに余裕を持って予防接種を済ませておくことが望ましいです。予防接種の効果の持続期間は、大体4~5カ月と言われています。インフルエンザの流行のピークは毎年12月~2月くらいですので、毎年10~11月に予防接種を受けておくのがよいでしょう。下記のように年齢によって接種回数が決められています。
・6カ月以上3歳未満:1回0.25mLを2回接種
・3歳以上13歳未満:1回0.5mLを2回接種
・13歳以上:1回0.5mLを1回接種
2回接種の場合は一週間以上開けていただければいつでも大丈夫です。1回目の接種時に12歳で2回目の接種時に13歳になっていた場合は、12歳として考えて2回目の接種を行います。13歳以上で何らかの基礎疾患のあり、免疫抑制状態にあると考えられる方は医師の判断で2回接種となる場合があります。 受験生や資格試験等で、より高い予防効果を期待して13歳以上でも2回接種を行うことがあります。任意ですので、1回接種でも勿論1回接種分の効果はあります。私も医師国家試験受験の年には2回接種をしたような気がします。お気軽に受付または主治医までご相談ください。
【インフルエンザワクチンの製造元と販売会社】
インフルエンザワクチンは日本国内では4社のワクチンメーカーが製造、製薬企業を通じて販売をしています。備忘録的にまとめました。
・北里(第一三共)
・デンカ生研(武田)
・阪大微研(田辺三菱、MSD)
もう一社、化血研(化学及血清療法研究所)というワクチンメーカーもインフルエンザワクチンを作っていますが、不祥事が無視出来ないくらいに多いので、お茶の水内科では取り扱っていません。
その他、インフルエンザワクチン、インフルエンザに関する情報について詳しくは厚生労働省のページなどをご覧ください。
→http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html