【腫瘍マーカー】
腫瘍マーカー(Tumor Marker)とは、悪性腫瘍が進行して来たり、再発して来ると陽性になることが多い検査指標です。様々な悪性腫瘍に対して様々な腫瘍マーカーがあります。腫瘍マーカーは原則的に治療効果を評価したり、癌治療後の再発モニタリングをするためのものであって、癌の早期診断には不向きです。
【腫瘍マーカーの仕組みと限界】
腫瘍マーカーは主に癌細胞が生成する物質や癌細胞に対する人体の反応を見ています。ですので、癌が小さい初期では癌であっても腫瘍マーカーが陽性にならなかったり、癌細胞の種類によっては腫瘍マーカーを生成しない癌細胞もあります。従って、腫瘍マーカー陰性だから言って癌ではないと確実に断定出来ないということに注意です。また、腫瘍マーカーは癌でなくてもしばしば陽性になることもあり、腫瘍マーカーのみで癌かどうかの判定は出来ません。一方で、腫瘍マーカーが明らかに陽性であったり、短期間で急激な上昇を認める場合は癌の発見につながることもありますし、癌と診断された後の治療効果の判定、治療後の癌の再発モニタリングなどに腫瘍マーカーは有用です。以上、腫瘍マーカーの性質を、感度が十分でなく、特異度も十分でない、と言います。腫瘍マーカーの性質と限界を理解した上で、必要に応じて検査指標として使います。詳しくは国立がん研究センターのがん情報サービスのページをご覧ください。
→http://ganjoho.jp/public/dia_tre/diagnosis/tumor_marker.html
【腫瘍マーカー】
様々な癌に対して様々な腫瘍マーカーがあります。代表的なものを一覧にまとめます。上記説明の通り、腫瘍マーカーの値だけで癌かどうかの確定診断は出来ないことに十分にご注意ください。
・肺扁平上皮癌:SCC、CYFRA、他
・肺小細胞癌:NSE、proGRP、他
・肺腺癌:CEA、他
・乳癌:CA125、CA15-3、CEA、NCC-ST-439、抗p53抗体、他
・甲状腺癌:CEA、カルシトニン、他
・食道癌:SCC、CEA、抗p53抗体、他
・胃癌:CEA、CA19-9、AFP、他
・肝細胞癌:AFP、PIVKA-II
・肝内胆管癌:CA19-9、CEA、他
・胆嚢癌、胆道癌:CEA、CA19-9、DUPAN-2、他
・膵臓癌:CA19-9、CA125、CEA、エステラーゼI、NCC-ST-439、他
・大腸癌:CEA、CA19-9、NCC-ST-439、抗p52抗体、他
・子宮頸癌:SCC、βhCG、他
・子宮体癌:CA125、βhCG、SCC、他
・卵巣癌:CA125、βhCG、CEA、CA19-9、他
・前立腺癌:PSA
・膀胱癌:尿中BTA、尿中CK8-18
他にも多数の腫瘍マーカー、特異的マーカー、非特異的マーカー、研究段階のもの含め、ありますが、専門的になりますので割愛します。全ての腫瘍マーカーを検査することは現実的でないので、3つまでを目安に調べます。腫瘍マーカーの検査は、療養上必要であると主治医が認めたものでない限り、原則的に自費となりますのでご注意ください。
【癌のリスク因子について】
癌の多くは加齢による老化現象ですが、確実なリスク因子を避けることが何よりも重要です。特に喫煙と大量飲酒は多くのは癌で明らかなリスク因子です。ですので、癌を心配して色々検査をするよりもまず先にやるべきことは、煙草を吸っていれば煙草を辞めることと、お酒を飲み過ぎであればお酒を減らすことです。また、胃癌におけるピロリ菌感染、肝細胞癌におけるB型肝炎ウイルス感染とB型肝炎ウイルス感染、子宮頸癌におけるヒトパピローマウイルス感染など、一部の癌は感染症が原因であることがわかって来ました。ワクチンによる予防、ピロリ菌除菌、肝炎ウイルスも治療可能な時代ですので、予防可能、治療可能な癌のリスク因子は予防、治療することが大事です。最後に、癌に対する健診の有用性は現時点ではまだエビデンスが十分でないところもありますが、健診によって早期発見、早期治療につながった例は確実ありますので、ハイリスクな場合では健診を定期的に受けることも大切です。詳しくは国立がん研究センターのページをご覧ください。
→http://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause/smoking.html
→http://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause/part_distinction.html
→http://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause/factor.html