【心疾患とは】
心臓の検査と一口に言っても様々な検査があります。検査は何のためにやるか、検査の目的が重要です。具体的には、心筋梗塞の疑いがあるので確定したい、心筋梗塞は否定的なので心筋梗塞を除外したい、不整脈の疑いがあるので不整脈を捕まえたい、症状が不整脈が原因でないことを確定したい、など第一にどのような心疾患を疑っているのか、第二にそれを確定したいのか除外したいのか、何をしたいのかによって検査は変わってきます。まずはどのような心疾患があるのかをまとめました。心疾患には様々なものがあります。厳密に分類し始めるとキリがないのですが、大きく4つに分類すると理解しやすいと思います。それぞれ代表的な検査をまとめました。
(1)虚血性心疾患
いわゆる心臓発作です。心筋梗塞、狭心症など、心臓の血管、冠動脈という血管が詰まったり、詰まりそうになったりする病気です。胸が痛い、胸が苦しいと言ったらまず虚血性心疾患を精査除外することから始まります。まずは心電図検査、次に心筋トロポニンの迅速検査、心臓CT検査、心筋梗塞と診断した場合はそのまま心臓カテーテル検査、治療と進めて行きます。心筋梗塞や狭心症を除外したい場合は心臓CTや心臓MRIなどが有用です。
(2)心不全
心臓の機能が低下している状態です。弁膜症、心筋症、心筋梗塞後など様々な原因があります。息切れ、だるさ、むくみ、動悸、冷汗、息苦しさ、痰、咳など多彩な心不全症状が出ます。心電図、レントゲン、BNP、心エコー、などによって調べて行きます。BNPは心不全の程度を反映するマーカーです。BNPの上昇がなければ心不全なしということがほぼ確定します。
(3)不整脈
不整脈は脈の異常です。不整脈と一言で言っても、精査や治療が必要な不整脈から、そうでないものまで様々な不整脈があります。心電図またはホルター心電図検査によって確定診断します。ホルター心電図検査は電極を胸に着けて、24時間、3日間、7日間など長期間、脈を連続的に記録、解析する検査です。動悸や失神等の症状に一致して脈の異常を認めれば診断が確定します。症状出現時に脈の異常を認めない場合、その症状は心臓とは関係がないことが確定します。
(4)その他
上記以外の心疾患と、そもそも心疾患以外の疾患の場合があります。具体的には、胸部には心臓以外に、食道、胃、肺、気管支、気管、甲状腺、胸骨、肋骨、肋間神経、皮膚、胸椎、横隔膜、大動脈など様々な臓器が存在します。まずはざっくりと、循環器系、消化器系、呼吸器系、その他と分類し、それぞれ原因を特定していきます。肋間神経痛で胸の痛み、逆流性食道炎で胸の不快感、気管支喘息で胸の苦しさ、甲状腺機能異常で動悸、貧血で息切れ、ということは珍しくありません。症状に応じて心臓以外の検査を同時に進めることもあります。
【心臓の検査】
・心電図:心筋梗塞や狭心症と言った虚血性心疾患と不整脈の検査です。
・レントゲン:心拡大の有無や程度、心陰影の異常を評価します。また肺炎や気管支炎、気胸など心臓以外の疾患がないかを評価することも重要です。
・心筋トロポニン:心筋逸脱酵素と呼ばれる検査です。心筋梗塞の確定、除外に有用です。陰性であれば心筋梗塞でないということがほぼ確定します。陽性であれば心筋梗塞であることが確定します。
・BNP:心不全のマーカーです。心臓にどれくらい負担が掛かっているかを反映します。心不全では、200、400、それ以上という高値になります。心不全でなくても陽性になることがあります。BNPの上昇がなければ心不全なしということがほぼ確定します。
・心臓CT:心臓の血管、冠動脈を正確に評価します。心電図や採血で異常がなくても、心臓CTで冠動脈に狭窄が見付かることがあります。心筋梗塞を起こす前に適切な治療が必要です。心臓CTで異常がなければ虚血性心疾患なしということがほぼ確定します。
・心臓MRI:心臓の血管、心筋、弁、心機能まで詳しく評価が可能です。心臓MRIで異常がなければ心臓病がないということがほぼ確定します。心臓MRIで初期の心疾患が見付かることがあります。
・ホルター心電図:24時間、3日間、7日間など長期間、脈を連続的に記録、解析する検査です。心電図検査の数十秒から数分間の検査では、心電図を取っていない時間に脈の異常があるかどうかはわかりません。正確な診断のためには、症状が出ている時の脈を捕まえることが重要です。症状出現時に脈の異常を認めない場合、その症状は心臓とは関係がないことが確定します。
・心エコー:心臓の動き、弁、心機能など詳しく評価する際に有用です。
・採血:心疾患のリスク因子として脂質異常症、糖尿病をチェックします。心疾患と似た症状を来たす疾患として、貧血、甲状腺機能、カテコラミンなどの内分泌検査を同時に検査することもあります。他に一般採血として炎症反応、肝機能、腎機能などをまとめて検査します。必要に応じて、感染症、自己免疫疾患、女性ホルモン、凝固能などを調べることもあります。他にも様々な心臓の検査があります。国立循環器病研究センターのページをご覧ください。
→http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph29.html