伝染性単核球症

【伝染性単核球症とは】

伝染性単核球症とは、急性のウイルス感染症で、唾液で伝染ることが特徴です。単核球とはリンパ球のことで、急性のウイルス感染に対して反応してリンパ球が増えることから、伝染性単核球症という名前が付きました。原因は主にEBウイルスの初感染だと言われています。ウイルス感染が原因であるため、通常の細菌性の扁桃炎とは異なり、抗菌薬が無効、不要であること、風邪と症状はほとんど同じですが同じウイルス感染であっても治癒までに4週間以上掛かることが大きな違いです。詳しくは国立感染症研究所のホームページをご覧ください。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/444-im-intro.html

【伝染性単核球症の症状】

発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹が特徴の急性のウイルス性感染症です。発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹は2週間から4週間続くことが特徴で、扁桃炎が治らない、風邪が治らないと言って受診されます。また症状だけでは急性の細菌性の扁桃炎と見分けが付かないので、扁桃炎の治療をしてもなかなか治らない、難治性扁桃炎の原因を色々調べていくこときっかけに伝染性単核球症を疑い検査をし、伝染性単核球症とわかることもあります。抗菌薬耐性の扁桃炎の可能性もあるので、同時に培養検査、薬剤感受性試験を行うこともあります。ペニシリン系抗菌薬で皮疹が出たことが伝染性単核球症を疑うきっかけということもあります。伝染性単核球症では、肝機能障害、肝臓腫大、脾臓腫大が見られることがありますが、肝機能障害をほとんど認めないものから、入院が必要なものまで程度の差が様々です。

【伝染性単核球症の特徴】

・唾液で感染します。キスや飲み回しで伝染ることがあります。そのため、キス病(Kissing Disease)と呼ばれることもあります。

・EBウイルスの初感染の場合にのみ、伝染性単核球症を発症すると言われています。一度感染すると抗体が出来るため再感染は起こりにくくなります。

・日本では成人の80%以上がEBウイルスに感染したことがあると言われています。幼少期に感染すると不顕性感染と言って何も症状がないか、軽い風邪症状と見分けが付きません。

・ウイルス感染症なので抗菌薬は無効です。しかし、扁桃や頸部リンパ節腫脹、発熱、咽頭痛を認め、細菌性の扁桃炎と症状だけでは見分けが付かないことが多いです。

・細菌性の扁桃炎だと思って、ペニシリン系の抗菌薬を投与すると、ペニシリンアレルギーではなくても、皮疹が出やすいというのが特徴です。逆に、ペニシリン系抗菌薬で皮疹が出たという病歴は伝染性単核球症を疑うきっかけの一つになります。

・潜伏期間は4~6週間です。

・原因ウイルスは、EBウイルスが代表的ですが、サイトメガロウイルス、エイズウイルス等、EBウイルス以外の他のウイルス感染でも伝染性単核球症は起こると言われています。

【伝染性単核球症の検査】

小児の伝染性単核球症の診断基準があります。成人の場合はこれを参考にしつつ診断します。伝染性単核球症に合致する臨床症状を認め、かつ血液検査にてリンパ球の増多、異型リンパ球の出現を認めること、さらに必要に応じてEBウイルスの初感染を示唆する抗体検査の結果によって診断されます。しばしば異型リンパ球(Atypical Lymphocytes)は伝染性単核球症に特異的です。異型リンパ球は、EBウイルス等のウイルスがBリンパ球に感染し、その後に活性化された未熟なT細胞であることがわかっています。異型リンパ球が陰性でも、リンパ球の有意な増多を認める場合は、伝染性単核球症が高まります。細菌性の感染症では通常好中球が増多するのに対し、伝染性単核球症では好中球の増多が見られないこと、むしろ好中球が減少、リンパ球の増多が認めらることが特徴です。EBウイルスの感染の有無に対して、EBウイルス関連の抗体検査によって判断が付きますが、検査費用が高額になってしまうことが多いこと、治療は対症療法が中心であることなどから、抗体検査までするかどうかはケースバイケースです。

【伝染性単核球症の治療】

伝染性単核球症に特異的な治療法はありません。咽頭痛や発熱に対して解熱薬を使います。肝脾腫大や脾臓腫大が強い場合は、肝臓破裂や脾臓破裂の危険性もあるため、転倒、打撲、外傷に気を付け、激しいスポーツを避けるなどが必要になることもあります。伝染性単核球症自体はウイルス感染症なので、抗菌薬は無効です。細菌感染の合併を認めると判断した場合には、適宜適切な抗菌薬を使うこともあります。伝染性単核球症の経過は長く、症状がなくなるまで全体で4~6週間掛かることが普通です。稀に慢性活動性EBウイルス感染症と言って、数ヶ月以上症状が続く場合があります。治療は全て対症療法です。


 

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