【遷延性咳嗽とは】
日本呼吸器学会「咳嗽のガイドライン第2版」では、咳の持続期間によって、3週間未満の急性咳嗽、3週間以上8週間未満の遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)、8週間以上の慢性咳嗽(まんせいがいそう)に分類しています。風邪を引いた時、風邪の後に多少咳が続くことは特別問題はありませんが、3週間以上続く場合、咳の原因を特定し、原因に対して適切な治療を行うことが大切です。急性であればあるほど感染症または感染症に関連する原因のことが多く、慢性であればあるほど感染症以外の原因を考えて行きます。
「咳嗽のガイドライン第2版」→http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0148/G0000523/0001
【遷延性咳嗽の鑑別疾患】
遷延性咳嗽の鑑別疾患は多岐に渡ります。今までの症状の経過、発熱の有無、痰が絡む咳(湿性咳嗽)か痰が絡まない咳(乾性咳嗽)か、痰の性状は膿性か水様性か、咳以外の随伴症状、治療に対する反応、既往歴、喫煙歴、アレルギー歴など詳しく症状を聞いて行きます。特に、咳の原因が感染症なのか感染症以外なのかは重要で、必要に応じて胸部レントゲン、採血にて調べて行きます。咳嗽のガイドラインでは、代表的な遷延性咳嗽の原因として、副鼻腔炎、気管支炎、咳喘息・アトピー咳嗽、胃食道逆流症、感染後咳嗽、の4つが挙げられています。逆に、一週間前後の咳に関しては自然軽快することが多く、治療の中心は鎮咳薬による対症療法となります。
・感染後咳嗽
・副鼻腔炎、後鼻漏症候群、副鼻腔気管支症候群
・気管支炎、マイコプラズマ、百日咳、クラミドフィラ
・気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽、小児喘息の既往
・アレルギー性気管支炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎
・喫煙、受動喫煙、慢性閉塞性肺疾患
・逆流性食道炎
・結核、非結核性抗酸菌症
・咽頭、喉頭、声帯周囲、気管、気管支、肺の悪性腫瘍
・気管支拡張症、真菌症、その他の呼吸器疾患
・その他の耳鼻咽喉科疾患
・うっ血性心不全
・薬剤性(ACE阻害薬、β遮断薬)
・気胸、気道異物
・気温、気圧、湿度、吸入物に対する反応
・心因性咳嗽、原因不明の咳
【慢性咳嗽の検査】
それぞれ、咳の原因を疑った場合、検査を進めて行きます。上記、全ての検査を同時に行うことは現実的でないので、可能性の高いと考えられるものから、見逃すとまずいと考えられるものから、優先順位を付けて調べて行きます。まずは多くの場合、胸部レントゲン、マイコプラズマや百日咳等の咳の感染症の可能性を考える場合、咳の感染症の検査項目を含む採血検査を行います。必要に応じて胸部CT、副鼻腔レントゲン、副鼻腔CTを追加します。アレルギー性を疑う場合、アレルギー検査や治療的診断を行います。診断的治療と言って、疑わしいと考えられる疾患に対して治療を開始し、治療に対する反応を見て診断していくスタイルを取ることも珍しくありません。喫煙、受動喫煙は明らかに咳の悪化因子ですので、喫煙、受動喫煙があればいずれも喫煙の煙を避けることが重要です。原因の診断が付かない場合、治療に対して咳が全く改善しない場合、呼吸器内科にてさらに専門的に診てもらう方針にしています。