【緊張性頭痛とは】
緊張型頭痛(Tension Type Headache: TTH)とは、筋緊張性頭痛とも言い、筋肉の緊張による頭痛です。慢性的な頭痛の原因として最も多いタイプの頭痛です。頭全体を締めつけられるような痛みで、痛みは激痛ではなく、拍動性の痛みや発作性の痛みではなく、常にある鈍い痛みが特徴で、首こり、肩こり、背中のこりを伴うことが多いです。温浴、適量のアルコール、上半身の運動で症状が改善することも緊張性頭痛の特徴です。頭を包み込むように帽状腱膜(Galeal Aponeurosis)に付着している後頭筋(Occipital Muscle)、側頭筋(Temporal Muscle)、前頭筋(Frontalis Muscle)、僧帽筋(Trapezius Muscle)などの筋肉の過剰な緊張が原因です。パソコン作業、悪い姿勢、長時間の車の運転、高い枕、身体の冷え、ストレス、カフェインの摂り過ぎ、などが関係しています。
【緊張性頭痛の診断】
以前からの慢性頭痛で典型的な緊張性頭痛の症状、緊張性頭痛の悪化要因を認める場合は緊張性頭痛の診断は難しくありません。国際頭痛分類第3版beta版(ICHD-3β)に詳しい診断基準がありますのでご参考ください。頭痛の頻度によっていくつかに分類がありますが、代表して慢性緊張型頭痛(Chronic Tension Type Headache)の診断基準をご紹介します。
→http://www.jhsnet.org/kokusai_new_2015.html
A、3ヵ月を超えて、平均して1ヵ月に15日以上の頻度で発現する頭痛で、B~Dを満たす。
B、数時間~数日間、または絶え間なく持続する。
C、以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目を満たす。C-1、両側性、C-2、性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)、C-3、強さは軽度~中等度、C-4、歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない。
D、以下の両方を満たす。D-1、光過敏、音過敏、軽度の悪心はあってもいずれか1つのみ。D-2、中程度・重度の悪心や嘔吐はどちらもない。
F、その他の疾患ではない。
必要に応じて脳に異常がないことを確認するために検査を追加することもあります。重要なことは、くも膜下出血や髄膜炎などの脳神経の病気、緑内障などの他の病気を除外することであり、診察、必要に応じて頭部CT、頭部MRIなどで調べて行きます。脳神経の症状に明らかな異常を認めない場合、基本的に心配ありません。片頭痛や偶発頭痛との鑑別も治療法や予防法が異なるため重要で、診断が困難な場合は神経内科医や頭痛専門医に紹介して詳しく調べてもらっています。
【緊張性頭痛の治療】
残念ながら緊張性頭痛の特効薬はありません。緊張性頭痛の悪化要因となる生活習慣を改善することから治療して行きます。特に、日常生活における姿勢の改善、定期的な全身運動、温浴は重要です。対症的に消炎鎮痛薬、筋弛緩薬、ビタミン薬、漢方などで頭痛を和らげます。
・ストレス、睡眠不足、不規則な生活、悪い姿勢、運動不足、カフェイン摂り過ぎ、は明らかに緊張性頭痛の悪化要因になりますので、改善出来るところはないかを考えます。スマホを操作する姿勢、ブルーライト、ディスプレイの高さや見やすさ、眼鏡やコンタクトは合っているか、枕は合っているか、普段改善出来る生活習慣はないかヒントを探します。
・ロキソニン(ロキソプロフェン)、ボルタレン(ジクロフェナク)、他、鎮痛薬です。胃が荒れるのを防ぐため、ムコスタ(レバミピド)やガスター(ファモチジン)などの胃薬と併用します。
・ミオナール(エペリゾン)、リンラキサー(クロルフェネシン)、筋弛緩薬です。筋肉の過剰な緊張をほぐします。
・葛根湯(かっこんとう)、釣藤散(ちょうとうさん)、呉茱萸湯(ごしゆとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、慢性頭痛には様々な漢方があります。相性を見ながら使います。
・メチコバール(ビタミンB12)、ビタメジン(B1、6、12)、ビタノイリン(B1、2、6、12)、ユベラ(ビタミンE)、神経の調子や末梢循環を整えるビタミン剤です。劇的な効果がある訳ではないですが、特に副作用がなく安全です。
・デパス(エチゾラム)、ソラナックス(アルプラゾラム)、メイラックス(ロフラゼプ酸)、等、抗不安薬です。ストレス性の要因が強い場合は、不安、緊張を和らげる働きを期待して少量使うこともあります。デパスには筋弛緩作用もあります。依存性、耐性に注意します。
全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。