胃腸炎

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【胃腸炎とは】
胃腸炎とは、吐気、嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛などの症状で、病名というより症候名です。前日に生モノ、少し傷んだものや古くなったものを食べた、学校や家族で同じ症状の人がいた、周囲で胃腸炎が流行っている、吐物や排泄物を処理した、もともと胃腸が弱い、など何らかの誘因があることが多いですが、明確な原因を特定出来ないこともしばしばあります。

【胃腸炎の診断】

胃腸炎の診断は主に臨床診断です。吐気、嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛などの症状が数日単位で認められる場合、急性胃腸炎と診断します。吐気は一回吐いてしまえば和らぐものものから嘔吐が止まらないものまで様々です。下痢も少し便が柔らかい程度のものから水のような下痢が止まらない水様便まで様々です。発熱はしばしば高熱になることもあればほとんど熱がなかったりします。いずれも、嘔吐や胃のあたりの痛みなどの上腹部症状から、段々と下痢や下腹部の痛みなどの下腹部症状に、下痢症状も段々と自然と治っていくのが特徴です。原因はウイルス性、細菌性など多岐に渡り、ウイルス性の場合はノロウイルス、ロタウイルス、細菌性の場合はカンピロバクター、サルモネラ菌、ビブリオ、クロプトスポリジウムなどありますが、症状だけでは見分けが付きません。迅速検査や培養検査などいくつかの検査はありますが、いずれも便検査が必要になるので便検査が可能な医療機関をご受診ください。ほとんどの急性胃腸炎は自然と治癒するものであり、治療は対症療法です。治療法も予防法も大きく変わらないので、原因を特定することは必須ではないと考えています。腹部症状を診察の結果、虫垂炎、憩室炎、膵炎、胆石症、腸閉塞、異所性妊娠など別の疾患が疑われる場合には、適宜検査を追加したり、専門的な検査が可能な医療機関に紹介したりしています。

【胃腸炎の治療】

胃腸炎の治療は主に対症療法です。原因のウイルスや細菌が体外に排出されれば症状は治ります。それまでの間、脱水に注意し、吐気が辛ければ吐気止めを、下痢が辛ければ整腸薬を、腹痛や発熱が辛ければ痛み止めや解熱薬を適宜使います。脱水予防には経口補水液が主流で、水分が取れていれば点滴は必須ではありません。通常数日で治りますが、下痢や軟便、お腹の張りなどだけ一週間以上続く場合もあります。

・経口補水液、胃腸炎治療の基本です。大塚製薬の「OS-1」を始め、いくつかの経口補水液がドラッグストア等で市販されています。ポカリスエットはそのまま浸透圧がやや高く、水で半分程度に薄めて飲むのがよいようです。冷やさず常温のままがよいでしょう。嘔吐や下痢に対して水分バランスの改善に五苓散(ごれいさん)をよく使います。

・タケプロン(ランソプラゾール)、ネキシウム(エソメプラゾール)、ガスター(ファモチジン)、胃薬です。胃痛や胃炎症状が辛い場合に使います。

・ビオフェルミン(乳酸菌)、ミヤBM(酪酸菌)、ラックビー(ビフィズス菌)、ビオスリー(乳酸菌、酪酸菌、糖化菌)、いわゆる善玉菌と呼ばれる整腸剤です。やさしく腸内細菌のバランスを整えます。

・カロナール(アセトアミノフェン)、ロキソニン(ロキソプロフェン)、解熱薬です。安全性が高く小児でも安全に使えるのはカロナール、より確実な解熱鎮痛効果があるのはロキソニンです。ロキソニンはムコスタ(レバミピド)などの胃粘膜保護薬と併用します。

・ナウゼリン(ドンペリドン)、プリンペラン(メトクロプラミド)、半夏瀉心湯(半夏瀉心湯)、吐気止めです。吐気が辛い場合に使います。

・ブスコパン(ブチルスコポラミン)、鎮痙薬です。腸の過剰な動きを押さえるお腹の痛み止めです。使い過ぎると腸の動きを押さえ、下痢の体外への排出を阻害してしまうとよくないので頓服で必要最低限使います。

・ロペミン(ロペラミド)、タンナルビン(タンニン酸アルブミン)、下痢止めです。一般に、胃腸炎の時の下痢は止めないほうがよいとされています。下痢で体外に排出してしまったほうが治りは早いと言われており、下痢止めで下痢を止めてしまうと治りが悪くなると言われています。ですので、下痢止めはどうしても必要な場合に最小限使います。

・クラビット(レボフロキサシン)、フロモックス(セフカペン)、他、抗菌薬です。病状経過や臨床症状から細菌性と判断される場合に使います。

【胃腸炎の時の食事】

水分と電解質がしっかり取れていればまずは人間は死にませんので大丈夫です。経口補水液で水分と電解質をしっかりと補給し、脱水を予防しましょう。吐気が少し落ち着いてきたら、ゼリー、ジュース、おかゆ、果物など消化のよいものから食事を始めましょう。下痢をしてしまうのを心配して食事を摂らないようにする方がいますが、むしろ摂ったほうがよいので、少しづつでいいので食べられるものを食べましょう。コーヒー、アルコール、炭酸飲料、脂っこいもの、香辛料などの刺激物など、胃腸への負担を掛けるものは症状が治るまで避けましょう。牛乳、ヨーグルト、プリンなどの乳製品、こんにゃく、キノコ海藻類、などの食物繊維の多いものも下痢の時は避けた方がよいようです。数日経てば自然と食事は取れるようになりますので、お好きなものを食べましょう。

【胃腸炎の予防】

胃腸炎の感染経路は経口感染です。古くなったものや傷んだものは食べない、生モノに注意する、吐物などを処理する時は、必ず手袋をして、水洗い、アルコール消毒を徹底しましょう。吐物や排泄物に対しては次亜塩素酸による環境消毒も大事です。胃腸炎だけではなく感染性予防の基本として、手洗い、うがい、マスク、日々の体調管理も大切です。


 

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