高血圧症

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【高血圧症とは】(2018/4/1更新)

高血圧症は喫煙に続いて心血管疾患の最大のリスク因子です。塩分の摂り過ぎ、運動不足、喫煙、お酒の飲み過ぎ、加齢などが関係しています。高血圧症は特に症状がないことので放置してしまいがちですが、血圧が高い状態が何年も続くと動脈硬化の原因となり、脳出血、くも膜下出血、心筋梗塞、狭心症、大動脈解離、腎機能低下など、様々な血管の病気の原因になります。早期であればあるほど正常値に戻すことが可能ですので放置せず早めにご相談ください。

【高血圧症の診断】

日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」の基準では、家庭血圧で140/90mmHgを超える場合に高血圧症と診断します。家庭血圧が不明な場合はまずは家庭血圧の測定から始めます。検診や病院の診察室では血圧が変動してしまう人も多いので普段の日常生活における家庭血圧が重要です。詳しくは日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」をご覧ください。

https://www.jpnsh.jp/data/jsh2014/jsh2014v1_1.pdf

【SPRINT試験について】

2017年11月、アメリカで発表されたSPRINT試験、「Systolic Blood Pressure Intervention Trial」という大規模臨床試験で、血圧をより厳格に下げたほうがいいのか(厳格群:管理目標120mmHg未満のIntensive Treatment群)、従来通りでいいのか(通常群:管理目標140mmHg未満のstandard treatment群)とで比較した結果、血圧120/80mmHg未満の厳格群に比べて、120-129/80-84mmHgの群で1.24倍、130-139/85-89mmHgの群で1.56倍、心血管死亡の有意なリスク上昇が認められたという結果になりました。アメリカではSPRINT試験の結果を受けて、120/80mmHg未満を正常血圧として新しく定義しました。日本のガイドラインでは高血圧症の診断基準は140/90mmHgですが、「高血圧治療ガイドライン2019」においてどうなるのかは注目です。また、現在のガイドラインにおいても、120/80を「至適血圧」として定めており、低血圧症当の合併症のない範囲で、確実に降圧を測ることは推奨されています。詳しくはSPRINT試験をまとめましたでのご覧ください。

https://ochanomizunaika.com/2018-0226

【二次性高血圧症】

何かの明らかな病気があって、その病気の症状の一つとして血圧が上昇している場合に、二次性高血圧症と言います。高血圧症患者さん全体の10%程度と言われています。二次性高血圧症の原因は、ホルモンの異常、血管の異常、腎臓病など、多岐に渡ります。難治性の場合、血圧高値の場合、若年者の高血圧症、二次性高血圧症の家族歴を認める場合等、二次性高血圧症の可能性を考え、適宜鑑別を行います。二次性高血圧症について詳しくまとめましたのでご覧ください。

https://ochanai.com/secondaryhypertension

【高血圧症の治療】

高血圧症の治療は大きく、食事療法、運動療法、禁煙、節酒、血圧を下げる薬と5つに分かれますが、方法はなんであれ血圧を正常値にしっかりと戻しそれを維持することが大切です。

・喫煙は明らかに血圧を上げる原因です。当院の診療指針として、喫煙者に対して禁煙を全ての治療に優先します。具体的には、喫煙者で血圧高値の場合はまずは禁煙を優先とし、禁煙後もなお血圧高値を認める場合に限り、高血圧症に対する治療を考慮という診療指針とします。なぜなら、有害物質を摂取している場合、国民医療費を使った降圧薬等による薬物治療よりも先に有害物質の摂取の見直しが優先であると当院は考えるからです。事実、禁煙後、血圧が正常値になった方は非常に多く、降圧薬も不要です。煙草も吸わずに、降圧薬も飲む必要がない状態、これが一番健康的です。

・塩分の摂り過ぎは血圧を上げる大きな要因です。食事は減塩を心掛けます。減塩というと薄味にしなくてはと思われる方が多いですが、血圧に関しては塩分が少なければそれで構いません。コショウ、唐辛子、わさび、カラシ、にんにく、生姜、みりん、だし、ゆず、山椒、シソ、スパイスなどで味付けを愉しむことは問題なしです。一方、塩、醤油、味噌、ソースなどには塩分がいっぱい含まれていますので摂り過ぎに注意です。減塩を続けていると人間の味覚も少ない塩分に次第に慣れて来ますので塩味に対する感受性が元に戻り、少ない塩分で美味しく食べられるようになります。

・運動は全身を使った有酸素運動が大事です。適度な運動であれば運動の種類にこだわり過ぎる必要はありません。大切なのは生活習慣として続けられることですので、ウォーキングでも何でもいいので、普段の生活で続けられる運動を選びましょう。理想の週の半分以上、天気がよい日は二駅くらいは歩く、休憩時間にオフィスの近辺を一周歩く、など日常生活の中で取り入れられる運動がよいでしょう。

・飲酒は適度な飲酒であれば少しだけ血圧を下げますが、過度な飲酒は血圧を上げる要因になります。個人差も大きいですが、適度な飲酒とはアルコール換算で20gを超えない程度、過度な飲酒とはアルコール換算で60g以上が目安です。ビールであれば400ml程度、ワインであれば200ml、日本酒や焼酎であれば1合程度です。ついつい飲み過ぎてしまうことが多いので気を付けましょう。

【高血圧症の薬】

高血圧症の薬、降圧薬には様々な種類があります。食事療法と運動療法を組み合わせても十分に血圧が下がらない場合、血圧の値によってはまずは薬でしっかり血圧を下げてそれから生活習慣を改善して血圧を管理していく方法もあります。自分のスタイルにあった血圧の下げ方を主治医とよく相談しましょう。血圧の薬を一度飲み始めると一生辞められなくなるのではないか?というご質問に対しては、第一に血圧を正常値に戻すことが目標ですので、その手段は何でもよいです。具体的には、血圧の薬を飲み始めて、例えば収縮期血圧が150から130に下がったとします。すると、薬で下がっている分の効果は20前後と考えられますから、食事と運動でしっかりと血圧を下げ、例えば半年後に収縮期血圧が110くらいでしっかりと安定したとすれば、その後、薬を辞めたとしても血圧は130前後に戻るだけですので、薬を辞めても大丈夫と判断します。下記にお茶の水内科でよく使う薬をまとめました。

・アムロジン(アムロジピン)、アダラート(ニフェジピン)、昔からあるカルシウム拮抗薬という降圧薬です。安く確実に下がります。高用量でむくみに注意です。

・アジルバ(アジルサルタン)、オルメテック(オルメサルタン)、ブロプレス(カルデサルタン)など、ARBと言われる降圧薬です。確実な降圧効果があり、腎臓や心臓を保護する作用があるというのがウリです。

・レニベース(エナラプリル)、ACE阻害薬と言われる降圧薬です。心筋梗塞後の二次予防ではARBよりACE阻害薬のほうが好まれる傾向があります。2割くらいの患者さんで空咳が出ますが、大丈夫であればそのまま継続して問題なしです。

・フルイトラン(トリクロルメチアジド)、利尿薬です。降圧効果を上乗せしたい時、心不全や浮腫みを取りたい時に使います。頻尿に注意です。

・アーチスト(カルベジロール)、メインテート(ビソプロロール)、心筋梗塞後や頻脈で血圧も下げたい場合に使います。心筋梗塞後は心機能保護と心筋梗塞再発予防の目的でほぼ必須で使います。

・アルダクトン(スピロノラクトン)、セララ(エプレレノン)、心不全や浮腫みを取りたい時、他の利尿剤と一緒に電解質のバランスを取りたい時に併用します。心機能保護作用を期待して使うことも多いです。

・ラジレス(アリスキレン)、直接レニン阻害薬という薬です。高血圧症の中で、血圧を上げるホルモン、レニンが高値のタイプによく効きます。

・柴胡加竜骨牡蛎湯、降圧薬そのものではありませんが、イライラ、精神の高ぶり、ストレスなどが背景にあって血圧も高い場合に柴胡剤と呼ばれるグループの漢方でイライラ感も血圧もスッと落ち着く場合がしばしばあります。

他にも多くの降圧薬がありますが、このへんで割愛します。全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。


 

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