過敏性腸症候群

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【過敏性腸症候群とは】

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome: IBS)とは、内視鏡検査などで特に異常を認めないけれど、腹部の痛み、腹部の不快感、便秘や下痢などが続く症状です。朝会社に行く途中、朝学校に行く途中、電車内でお腹が痛くなる、下痢が強い、便秘が強い、下痢も便秘も両方辛い、お腹にガスが溜まる、ガスが多い、便が残った感じがする、お腹の様々な症状がありますが、いずれも排便すると少し症状は軽くなることが多いのが特徴です。何らのストレス性の要因が関係していることが多く、ストレスや緊張で強い時期に悪化し、ストレス性の要因が和らぐと症状も軽快することも過敏性腸症候群の特徴です。社会人、管理職、新人社会人、受験生、若い人にも多いです。過敏性腸症候群の診断においても治療においても重要なことはその症状が原因で本人が日常生活で困っているかどうかです。多少の症状があったとしても過敏性腸症候群のみで命に関わることはありませんので特にそんなに困っていなければ様子見で構いません。過敏性腸症候群の症状が原因で日常生活に困っているようであれば適切な治療がありますので一人で悩まずに主治医までご相談ください。

【過敏性腸症候群の診断】

過敏性腸症候群の国際的な診断基準としてRome基準があります。2016年夏にRome IVと改訂されましたので、ご紹介します。

Rome Ⅳ基準による過敏性腸症候群の診断基準

週に1回以上の腹痛が3ヶ月以上続いており、下記項目のうち2つの以上の項目を満たす場合:

(1)排便により症状が改善すること

(2)排便頻度が症状の変化に関連すること

(3)便の形状が症状の変化に関連すること

症状は6ヶ月以上前から出現していること

大前提として、胃や腸に明らかに原因となる病気がないことが重要です。症状が過敏性腸症候群として特徴的であれば過敏性腸症候群としてまずは診断、治療していきますが、どこかで一度胃カメラや大腸カメラなどで胃や腸に明らかな原因がないことをチェックします。

【過敏性腸症候群の治療】

これ一発で100%症状が治るという特効薬はないのですが、日常生活に支障がないように症状を和らげるための治療法はいくつかあります。仕事や学業など日常生活に支障を来さない状態に症状を和らげていくことがゴールです。治療には個人差も多く、いくつか反応を見ながら一緒に合う薬を見付けて行きます。下記、過敏性腸症候群に対して使う薬をまとめました。

・ビオフェルミン(乳酸菌)、ミヤBM(酪酸菌)、ラックビー(ビフィズス菌)、ビオスリー(乳酸菌、酪酸菌、糖化菌)、いわゆる善玉菌と呼ばれる整腸剤です。すごい強力な作用もないですが、やさしく腸内細菌のバランスを整えます。

・コロネル(ポリカルボフィル)、腸内で水分を程よく吸収し、硬過ぎず柔らか過ぎず便の状態をちょうどよい具合にします。

・イリボー(ラモセトロン)、セロトニンという腸の運動や痛覚に関わるホルモンのバランスを整えます。主に下痢症状が強い場合に使います。

・ガスコン(ジメチコン)、お腹にガスが溜まって辛い時にガスの流れを整えます。

・チアトン(チキジウム)、トランコロン(メペンゾラート)、セレキノン(トリメブチン)、ガスモチン(モサプリド)、腸の動きを調整します。使い過ぎると便秘になりますので注意です。

・マグミット(酸化マグネシウム)、アローゼン(センナ)、プルゼニド(センノシド)、ラキソべロン(ピコスルファート)、下剤です。便秘が辛い場合に使います。センノやセンノシドは大腸刺激性下剤と言われ、使い過ぎると効かなくなりますので注意です。

・桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、大建中湯(だいけんちゅうとう)、桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)、過敏性腸症候群によく使われる漢方です。相性を見ながら使います。

・潤腸湯(じゅんちょうとう)、温経湯(おんけいとう)、小建中湯(しょうけんちゅうとう)、補中益気湯(ほちゅうえきとう)、安中散(あんちゅうさん)、平胃散(へいいさん)、六君子湯(りっくんしとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、胃腸の不調に対しては様々な漢方があります。相性を見ながら使います。

過敏性腸症候群は食生活や生活習慣とも密接に関係しています。暴飲暴食を避ける、アルコールやカフェインの摂り過ぎを控える、脂っこいものや香辛料の摂り過ぎを避ける、ミルクアレルギーなど特定の食物アレルギーがある方は合わないものを控えることも大事です。ストレスを溜め込まない、規則正しい生活、睡眠を十分にとる、働き方を見直す、適度な運動は腸の動きを整える効果に加えて、適度なストレス解消にも有用です。お腹の様々な不調や食事療法などについて過敏性腸症候群がご専門の田中先生の「おなかハッカー」というサイトがあります。ぜひご参考ください。

おなかハッカー→http://abdominalhacker.jp

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。


 

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