薬物乱用性頭痛

【薬物乱用性頭痛とは】

薬物乱用性頭痛(Medication Overuse Headache: MOH)とは、一言で言うと、頭痛薬の使い過ぎによる頭痛です。頭痛薬は適切に必要な量使えば安全ですが、長期的に連用してしまうと、頭痛薬の使い過ぎによってむしろ痛覚の閾値が過敏になってしまい、慢性的に頭痛が起こりやすい状態、治りにくい状態になってしまいます。具体的な基準としては、頭痛薬を一ヶ月のうち10日以上内服している状態が3ヶ月以上続くと、薬物乱用性頭痛になるリスクがあります。薬物乱用性頭痛は処方薬でも市販の頭痛薬でもいずれでも起こる可能性があります。頭痛が起こるのが不安で予防的に内服したり、ちょっとの痛みでも念のため頭痛薬を飲むことが習慣付いてしまうと薬物乱用性頭痛に陥りやすいので注意です。市販薬、処方薬問わず、薬物乱用性頭痛は起こりえますので、市販薬だからと言って安全という保証はありません。むしろ市販薬のほうが乱用されていることが多いと言われていますので、以前は効いていた頭痛薬が最近は効かなくなって来た、頭痛の頻度や程度が増えて来た、という場合は要注意です。事実、代表的な頭痛薬の一つである「ロキソニンS」の販売メーカーである第一三共ヘルスケアも薬物乱用性頭痛の危険性と、鎮痛薬に頼り過ぎないようにと注意を喚起しています。

https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_loxonin-s/naifuku/understand/headache/type04.html

【薬物乱用性頭痛の診断】

薬物乱用性頭痛は、薬物誘発頭痛、薬物誤用頭痛、反跳性頭痛などと呼ばれることもあります。いずれも頭痛薬を使い過ぎることが原因で起こる頭痛です。国際頭痛分類第3版beta版(ICHD-3β)に診断基準がありますのでご紹介します。

http://www.jhsnet.org/pdf/ICHD3_up/008_02057_2_10.pdf

A、以前から頭痛があり、頭痛は一ヶ月に15日以上ある

B、頭痛薬を三ヶ月を超えて連用状態にある。(一ヶ月に10日以上、または15日以上、頭痛薬を使うことがある。)

C、他に原因となる疾患がない。

加えて、頭痛薬を中止または減量することで次第に頭痛が軽快していくこと、も薬物乱用性頭痛の特徴です。頭痛薬の種類としては、ロキソニン(ロキソプロフェン)やブルフェン(イブプロフェン)などの非ステロイド性消炎鎮痛剤(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs: NSAIDs)、トリプタン、エルゴタミン、オピオイド、カフェイン、など、ほとんど全ての頭痛薬で薬物乱用性頭痛は起こる可能性があります。カロナール(アセトアミノフェン)は基本的には非常に安全な薬ですが、長期に常用してしまうと他の頭痛薬と同じく薬物乱用性頭痛のリスクはゼロではありませんので注意です。

【薬物乱用性頭痛の治療】

薬物乱用性頭痛の治療はズバリ、原因となっている頭痛薬の乱用の中止です。

・治療の原則は頭痛薬乱用の中止であり、理想的には頭痛薬を二ヶ月間飲まないようにします。最初の二週間くらいは辛いですが、次第に頭痛の頻度や程度は軽減して行きます。頭痛薬は必要最低限とし、頓服として本当に必要な時のみ頭痛薬で対処するようにします。

・頭痛に合った頭痛薬を本当に必要な時だけ内服するようにします。薬物乱用性頭痛に陥りやすいリスクとして頭痛が起きるのが心配だから予防的に頭痛薬を使う習慣がありますが、頭痛薬は本当に頭痛が起こって辛い時のみ頓服で使うようにし、予防的に連用しないようにしましょう。頭痛薬は使ったとしても一ヶ月のうち10日未満に、本当に必要な時のみとし、出来るだけ頭痛薬に頼らないようにしましょう。また片頭痛や緊張性頭痛には、それぞれ適した頭痛薬と対処法がありますので、まずは頭痛の病型の診断と、それぞれ頭痛の病型に合った頭痛薬を医師の指示のもとルールを守って使うようにしましょう。

・片頭痛→https://ochanai.com/migraine

・緊張性頭痛→https://ochanai.com/tensionheadache

難治性の頭痛の場合、二次性頭痛と言って頭痛を引き起こしている他の病気がないか、詳しく検査が必要ば場合もあります。または紹介で頭痛専門医にて一度専門的に診察してもらったりしています。いずれにせよ、頭痛が治らない場合は自己判断せずに、主治医にご相談ください。

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。


 

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