【胃腸炎とは】
胃腸炎とは、吐気、嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛などの症状で、嘔吐や吐気、胃のあたりの痛みなどの上腹部症状から、次第に下痢や下腹部の痛みなどの下腹部症状に移り変わり、通常数日間で自然軽快することが特徴です。冬場に学校や家族などでしばしば流行します。
【胃腸炎の診療】
胃腸炎の診断は主に臨床診断です。医療機関に受診する意味は主に、一見胃腸炎に見えて胃腸炎ではない他の疾患を除外することです。胃腸炎に特効薬はなく、治療の中心は主に対症療法です。明らかな胃腸炎と考えられる場合、実は医療機関を受診する意味はあまり大きくありません。自然軽快することが特徴であり、水分が摂取出来ていれば通常点滴は不要です。ウイルス検査の必要性があるケースは限定的です。胃腸炎の診療について詳しくまとめましたのでご覧ください。
胃腸炎→https://ochanai.com/gastroenteritis
【胃腸炎の治療】
胃腸炎の治療は基本的に対症療法です。原因のウイルスや細菌が体外に排出されれば症状は自然に治ります。通常数日間の経過で自然軽快していくのが特徴ですので、多くの胃腸炎は自宅療養で十分です。処方薬や点滴で治りが早くなるといったエビデンスはありません。ここでは市販薬を中心に胃腸炎の自宅療法の仕方を説明します。下記市販薬は一例ですが、全て一般の薬局、ドラッグストアで入手可能です。
・「OS-1」、経口補水液です。水分を補給して、脱水を予防します。冷やさず常温のままがよいでしょう。ポカリスエット等の清涼飲料水はそのまま浸透圧が高めで水で半分程度に薄めて飲むのがよいようです。点滴でも経口補水液と中身はほとんど同じものですので経口摂取可能であれば点滴は必要ありません。
・「ガスター10」、胃薬です。処方薬のガスター(ファモチジン)と同一成分です。処方箋のPPIよりも効き始めるのが早いと言われています。そもそもPPIはもともと胃潰瘍の薬であり、胃腸炎だけで胃潰瘍になることは考えにくいので、胃腸炎であれば通常ガスターで十分です。
・「ツムラ半夏瀉心湯」、吐気止めです。もともとつわりの漢方で妊娠中も授乳中も安全に使えます。吐気も吐けるだけ吐き切ってしまったほうがよいとされていますが、水分が摂れないとよくないので、吐気が辛ければ吐気止めは適宜使って構いません。
・「新ビオフェルミンS」、整腸薬です。胃腸炎の時の下痢は止めないほうがよいです。下痢は原因のウイルスや細菌を体外へ排出するための自然な身体の働きであり、下痢を止めてしまうと体外への排出が抑えられてしまうからです。
・「ツムラ五苓散」、利水薬です。水分バランスを整えます。脱水を予防し、下痢症状を優しく和らげます。
・「タイレノールA」「小児用バファリンCII」、解熱薬です。安全な解熱薬であるカロナール(アセトアミノフェン)と同一成分の市販薬です。タイレノールは一錠300mgと大人用です。一日の上限量3000mgを超えないように注意しましょう。小児用バファリンは一錠33mgと小児用に設定されているので年齢や体重に合わせて使います。
後は自宅で水分を十分に取って休んでいれば大丈夫です。胃腸炎は通常数日間の経過で自然軽快していくのが特徴ですので、多くの胃腸炎は自宅療養で十分に治ります。
【胃腸炎の時の食事】
水分と電解質がしっかり取れていればまずは人間は死にませんので大丈夫です。経口補水液で水分と電解質をしっかりと補給し、脱水を予防しましょう。吐気が少し落ち着いてきたら、ゼリー、ジュース、おかゆ、果物など消化のよいものから食事を始めましょう。下痢をしてしまうのを心配して食事を摂らないようにする方がいますが、むしろ摂ったほうがよいので、少しづつでいいので食べられるものを食べましょう。コーヒー、アルコール、炭酸飲料、脂っこいもの、香辛料などの刺激物など、胃腸への負担を掛けるものは症状が治るまで避けましょう。牛乳、ヨーグルト、プリンなどの乳製品、こんにゃく、キノコ海藻類、などの食物繊維の多いものも下痢の時は避けた方がよいようです。数日経てば自然と食事は取れるようになりますので、お好きなものを食べましょう。
【胃腸炎の予防】
胃腸炎の感染経路は経口感染です。古くなったものや傷んだものは食べない、生モノに注意する、吐物などを処理する時は、必ず手袋をして、水洗い、アルコール消毒を徹底しましょう。吐物や排泄物に対しては次亜塩素酸による環境消毒も大事です。胃腸炎だけではなく感染性予防の基本として、手洗い、うがい、マスク、日々の体調管理も大切です。
全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。