ラクナ梗塞

stroke

【ラクナ梗塞とは】

ラクナ梗塞(Lacunar Infarction: LI)とは、脳梗塞の中で最も多いタイプの脳梗塞で、脳の中の穿通枝(せんつうし)という200μm程度の細い血管が詰まって起こる病気です。ラクナ(Lacunar)とは小さな空洞という意味で、ラクナ梗塞の15mm未満の小さな梗塞巣を意味しています。最大の原因は高血圧症で、高い圧力が細い血管に負担が掛かると、血管が脆くなり、破れたり、詰まったりしやすくなります。穿通枝が破れると脳出血、詰まるとラクナ梗塞になります。どちらも高血圧症が最大のリスク因子ですので、高血圧症があれば高血圧症の治療、血圧を正常に保つことが最も重要です。

【ラクナ梗塞の症状】

脳の中の穿通枝と呼ばれる細い血管が詰まって起こります。梗塞に陥った血管から先の血流が途絶え、脳の神経細胞に酸素と栄養分が行き渡らなくなった場所の神経機能が失われる症状、神経脱落症状が突然発症します。症状は起こる場所によって様々で、軽度の呂律障害、上肢や下肢の痺れ、麻痺、などの軽微な神経脱落症状が特徴的で、ラクナ症候群(Lacunar syndrome)と呼ばれます。ラクナ梗塞のみで意識障害に陥ることは稀です。脳卒中というと突然の頭痛というイメージがあるかも知れませんが、ラクナ梗塞のみでは基本的に痛みはありません。例外的に視床梗塞では視床痛(Thalamic Pain)という痛みが出ることがあります。穿通枝の場所によっては明らかな自覚症状を来さない無症候性脳梗塞、いわゆる隠れ脳梗塞の場合もしばしばあります。無症候性脳梗塞が多発すると、多発性ラクナ梗塞と言って、一個一個の梗塞の症状は明らかでなくても積み重なると脳の中の細かい神経ネットワークに障害を来して、もの忘れ、脳血管性認知症(Vascular Dementia)の原因になります。症状の有無に関わらず、予防することが大事です。

【ラクナ梗塞の診断】

ラクナ症候群などの神経脱落症状が突然発症している場合、脳卒中を疑い速やかに頭部画像検査を行います。まずは大きく、出血なのか梗塞なのか、どちらでもないのか、が重要ですので、頭部CTにて脳出血、くも膜下出血を検出します。頭部CTで出血が否定されたら、頭部MRIを撮影します。頭部MRI、特に拡散強調画像(Diffusion Weighted Image: DWI)は発症早期の脳梗塞も検出可能です。脳卒中の病型診断、原因の精査のために、通常、MR血管画像(Magnetic Resonance Angiography: MRA)、頸動脈エコー、心原性脳塞栓症の鑑別のため心電図、心エコー、凝固や線溶マーカーも含めた採血検査も行います。

【ラクナ梗塞の治療】

ラクナ梗塞は小さな梗塞ですので、多くの場合ラクナ梗塞だけで死因となることはありません。ラクナ梗塞の急性期に対する治療、脳梗塞後遺症に対してのリハビリテーション治療、再発予防のための治療がメインになります。

・プレタール(シロスタゾール)、バイアスピリン(アスピリン)、プラビックス(クロピドグレル)、パナルジン(チクロピジン)、抗血小板薬です。血液が固まるのを防ぎ、脳梗塞の再発を予防します。ラクナ梗塞は高血圧症を合併することがほとんどで、出血リスクが少ないプレタール(シロスタゾール)が選択されることが多いです。キサンボン(オザグレル)、静注の抗血小板薬です。日本国内では脳梗塞急性期によく使われます。

・スロンノン(アルガトロバン)、静注の抗凝固薬です。ラクナ梗塞の急性期治療には主に抗血小板療法を行いますが、心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、分枝粥腫型梗塞(Branch Atheromatous Disease: BAD)も疑われる場合には抗凝固療法を使います。

・グルドパ(アルテプラーゼ)、遺伝子組換組織プラスミノーゲン活性化因子(recombinant tissue Plasminogen Activator: rt-PA)、血栓溶解薬です。発症4.5時間以内の脳梗塞に対して、適応基準を満たせば、合併症に注意しながら使います。日本脳卒中学会の「rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針」に従って使用します。通常、ラクナ梗塞だけで血栓溶解療法が必要になることはほとんどありません。

・グリセオール(グリセリン)、マンニット(マンニトール)、脳浮腫治療薬です。ラクナ梗塞だけで脳浮腫治療が必要になることは通常ほとんどありません。

・ラジカット(エダラボン)、フリーラジカルスカベンジャー(Free Redical Scavenger)と呼ばれる脳保護薬です。脳保護作用を期待して日本国内の施設によってはよく使われます。

・サアミオン(ニセルゴリン)、セロクラール(イフェンプロジル)、脳循環改善薬や脳機能改善薬と呼ばれる昔からの薬がいっぱいありましたが、薬効の再検証の結果、明らかな効果がないことがわかったものがほとんどで、今ではあまり使いません。

脳梗塞後の後遺症としての神経機能障害に対しては脳梗塞後リハビリテーションを行います。

【ラクナ梗塞の予防】

・各種降圧薬、ラクナ梗塞の最大の原因は高血圧症です。脂質異常症、糖尿病も動脈硬化のリスクですが、ラクナ梗塞のみに関して言えば関与はあまり大きくないと言われています。ラクナ梗塞の予防のためにも再発予防のためにも血圧を正常値に保つことが非常に大事です。高血圧症の治療については詳しく高血圧症のページをご覧ください。

・高血圧症→http://ochanai.com/hypertension

ラクナ梗塞の予防は第一に高血圧症の治療です。さらに、脂質異常症、糖尿病、心房細動、大量飲酒など、脳卒中のリスク因子があれば、脳卒中予防のために、それぞれきちっと治療しましょう。

・脂質異常症→http://ochanai.com/dyslipidemia

・糖尿病→http://ochanai.com/diabetesmellitis

・心房細動→http://ochanai.com/atrialfibrillation

・喫煙→http://ochanai.com/smoking

・大量飲酒→http://ochanai.com/hepaticdysfunction

全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。


 

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